コミュニケーション重視で専門書読解力はどうなる?

コミュニケーション重視で専門書読解力はどうなる?

しかしながら、受験科目指定廃止の提案のところでも触れましたが、コミュニケーション重視の英語にシフトすることで、大学進学後の専門書読解能力不足が生じてしまうのではないかという反論が当然にして想定されます。

この反論に対するケアとして私は、大学での教養課程の本来の存在意義を見直すことで十分に対応できるのではないかと考えています。

私が提案した中学校・高等学校の英語教育の連携によって達成されるべきコミュニケーションツールとしての英語力としては、現在の高校1年生の教科書で扱うレベルまでの語彙を全て理解し、なおかつそれを会話の中で自由に操ることができるという程度が実現可能にして十分な力ではないかと思います。

すると、現時点での高校2年・3年の教科書で扱うレベルの語彙については未習となってしまいます。しかし、私はそれで十分ではないかと思います。

現在、日本の英語教育を中学校・高等学校・大学と受けて社会に出た人が3年間英語に触れることがなかったと仮定した場合に、会話で使えるかどうかは別として、英単語の意味を記憶していられるレベルが大体、中学3年~高校一年の途中くらいまでのレベルではないかと思います。

このことは、自然な形で頭の中にとどめておくことができるレベルがその程度ということになると思われます。逆にそれ以上となると、「一生懸命に」頭に叩き込まなければ入らないような単語ということになります。通常の会話にあまり必要のない概念を表す言葉がそれにあたります。

どうせ、時間が経ってしまえば忘れてしまうようなものを一時的に無理をして覚えさせようとすることは社会的な損失であると思います。

それよりも、自然に頭に残る単語を自由自在に操ることができ、英語をコミュニケーションツールとして活用できるようにさせてあげられるほうがどれだけ社会的利益につながるだろうと思います。

ですから、義務教育である中学校と進学率90%を超える高等学校での教育では、その利益を生徒に享受させることに徹することで未習になってしまう分については無視をしても問題ないと思います。

その一方で、大学の教養課程においてその未習分のフォローとその後の専門課程で必要とされる専門用語についての教育を徹底させることでこの問題は解決されると思います。

日本の大学がレジャーランド化しているといわれて久しいですが、私の経験から言っても、大学の教養課程にて行われる英語教育は、高等学校の延長であり、そのスタイルはほとんど変わらず、長文読解を中心としたものです。一部では、外国人講師によるコミュニケーション中心の授業もありますが、受験というプレッシャーから開放されたばかりの大学生には、受験時代のようなモチベーションを求められるわけもなく、結果的には高等学校の延長というよりも受験時代に培ったレベルを維持することもおぼつかないというのが現実だと思います。これが日本の大学の教養課程の実態なのだと思います。

日本の大学進学率は2006年時点で46%程度です。

非常に多くの方が大学に進学するようになったといっても、まだ全体の半分に過ぎないのです。彼らは残りの半分の人々が負担しないコストと時間をかけてわざわざ大学での授業を受けるという選択をしているわけですから、少なくとも大学側が彼らの知的好奇心をくすぐるサービスを提供するのであれば、彼らは必ずそれに応えるはずです。

もし、中学校・高等学校の英語教育にて、ほとんど全ての人が現在の高校1年の教科書で扱うレベルの語彙を自由自在に使うことができるということを前提としたならば、大学の教養課程における英語の授業は全てネイティヴの講師による完全な直接法によって行うことが可能となるはずです。

そして、直接法によってその時点で未習となっている現在の高校二年、高校三年の教科書で扱うレベルの語彙を学び、その後、自らの進むべき分野の専門用語についても同じ方法によって習得していくようになれば、まさに理想的な英語教育が実現できると思います。

もう一点付け加えたいのは、それに伴って専門課程進級時に厳正な試験を課すことです。大学の教養課程二年間で自らが進む専門に応じて、より高度な英語を直説法で学ぶモチベーションを得て、専門課程に進むタイミングにて厳正な進学試験を課すという仕組みを作ることで、より効果的かつ健康的な言語習得段階を踏むことができるようになると考えるからです。

こうすることで、英語の習得だけを目的に海外留学を目指すという人も少なくなると思いますし、大学のレジャーランド化という流れも少しずつ解消されるはずです。

まさに、社会的損失を中学校・高等学校・大学の連携の中で回避することができるようになると思います。

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